きりしま月の舟

自分に集中する

2022.02.26更新


 世の中はずいぶんと揺れ動いています。ロシアのウクライナ侵攻は、胸が痛みます。「制裁、制裁」と叫ぶほかに方法はないものか、と思っていたら、ロシア国民の皆様が「ウクライナごめんなさい」のデモをされているとの報道に救いを感じます。ただ、そうした方々が連行されていく姿もまた痛々しく、そのなかで、この日本という国、霧島というユートピアのような土地に住んでいるわたしは何をするべきか、を考えています。

 自分に集中する。それがここ数週間のわたしの課題ですが、それが一気に国際問題、平和の問題で突きつけられている感じがします。

 他者をリスペクトするとはどういうことか。他者に侵攻しないとはどういうことか。国と国の問題は、実は個人と個人の問題にとてもよく似ています。

 最近、わたしはSNSで気になる書き込みにコメントする自分がいて、たとえば、子どもの悪口を書くとか、無謀な行動をするとか、に関して、「そうじゃなくってえ」というコメントをしました。

 わたしのコメント自体は多分「正しい」、「優しいアドバイス」の範疇にあるもので、当事者の方々も「ありがとうございます」「わかりました」とのお言葉をくださったのですが、どうにも後味が悪くて、落ち着きませんでした。

 このコメントって、わたしの母の物言いにそっくりじゃん。そう思えて仕方なかったのです。わたしの母は、本当によくできた人で、良妻賢母の鑑みたいな、料理上手、生活全般すべてに行き届いた人なのですが、まあ他人に対する「ダメ出し」がすごかった。まあ、すべての人に批判ばっかりしていたかも。

 わたしのファッションに関して、まあ何を着ても「変ね。着替えてきて」とおっしゃるお母さま(笑)。実家に行くのに、迎賓館に行くくらいのファッションで行かないといけない。つねにわたしのファッションに対するお言葉があり、それは何を基準にしているのかが皆目わからないので、対処しようもない。つまり、気分次第で、「あらいいわね」「あら、変なの」ということになります。

 そのジャッジが嫌で、実家に帰るにも、玄関を開けるときに深呼吸してからでないと入れなかったくらい(このことは、このブログで何度も書きましたけどね)。

 その母が92歳で、ご近所の施設にお世話になり、そこで心不全になり、医療センターに運ばれ、そこでベッドから落ちて、別の病院に転院となり、またご近所の病院に転院となって、先日また施設に戻れるほどに回復してきました。

 やはり、わたしを産んでくれた母ですし、精いっぱい育ててくれたことにも深く感謝しているし、できるだけ穏やかに過ごしてほしいと思って、きょうだい4人、兄嫁さん、弟嫁さん、ユタカ君と協力して、母を見守っているつもりですが、たまに、あのダメ出しの連発への怒りがまたふつふつと湧いてきたりします。

 いま、テレビでロシア大統領の発言を聴いていると、母に似てるなあ、と思ったりもします(笑)。他人のふるまいが気に入らないからと言って、武力で「平和的武装解除」をするという矛盾。わたしのファッションをこき下ろすときの母みたい(笑)。

 そして他人様にそんなダメ出しをしないように、と心掛けているつもりなのに、また「あなたのためを思って」的な発言をして、まあ、なんというか、そんな自分にがっかりきます。

 でもね、ジャッジ好きな母もわたし自身も許してあげて、どんなに愛に対して無知であったとしても、無条件に愛していくことが大事なんだなあ、とちょっとした悟りの境地まで、何とかたどり着きました。多分また、一歩進んで、2歩下がるみたいな進化の仕方でしょうが、何だか、心が落ち着いてきました。

 人間はみな、未熟。そして矛盾する存在。悪魔的なものも、女神的なものも同時に持っている。

 母は母なりに自分の最期を全うすべく、いまを頑張っている。それを信じ切る。母を手放す。母がわたしにすがっていると思っていたけれど、実はわたし自身が母にすがっているんだなあ。

 人は、その人の課題をもって、その人の道を歩む。それが危険であろうと、反社会的であろうと、貧しくあろうと、それはその人の課題なんだ。

 その課題の解決は、「あなたのためを思って」他人が何かをしてくれてもダメ。自分自身が自分自身を高めていくしかない。

 それは一見冷たいことのようだけれど、他人の部屋にノックもせずに入って、あれもダメ、これもダメ、と否定的な見解をするよりもずっと「その人のため」になります。

 ここがまた難しいのだけれど、他人に無関心であるとか、困っている人、成長途中の子どもを見捨てる、という極端な行動に走るのではなくて、他人の荷物をむやみやたらに持たない、ってことです。

 要は、自分が「いい人」をやめて、たったひとりの孤独な境地でどれだけ豊かに過ごせるか、という課題と、他人の荷物を持たない、という課題は同じなんですね。

 自分が孤独で、空しくて、劣等感の塊だから、他人様にちょっかいを出す。その仕組みをよく理解するならば、自分がたったひとりで自立して、凛として、崇高な場所に立っていればいい、ということになります。

 さ、自分に集中しましょう。いつも機嫌が良いように。いつも心穏やかであるように。不安や孤独感、恐怖を持たないように。いえ、持ったとしても、そんな自分を赦してあげるように。それがどこから来るのかをしっかり見つめながら。

 どんなときも自分を最高に愛してあげる。自分に優しい言葉、感謝の気持ちをかけ続ける。それが母の最期を美しいものにするし、武力侵攻の問題へ強い心で向き合えるでしょう。

 それは簡単じゃないようで、実は簡単かも。毎日の豊かさに感謝するってことだしね。

 昨日は、午前中に「月の舟通信」をユタカ君と仕上げて、午後から出かけました。わが息子、娘のような又吉秀和君、そのパートナーのなつきちゃん、ピアニストの室屋麗華ちゃん、コントラバスの森田良平君たちが主催する「モーツアルトの夕べ」を聴きに出かけました。

 いやあ、素晴らしかった。わたしたち夫婦が、同じ会場のサンエールかごしまで、この息子たち、娘たちといろんなイベントをやってきた、その似たようなことを息子、娘たちがやってくれている、という達成感。自分のパワーが百倍になった気分でした。

 「みたけさんたちの蒔いた種が実っていますね」と言ってくださる方もありました。嬉しかったなあ。

 彼らは実力ある方々だから、わたしたちが種を蒔かなくても、こういうことは自力でやれただろうけど、まあ、なんというか、ジャングルにうっすらと道を創るべく、草刈りをしてきた、という実感はありますね。そのうっすらとした道を、息子、娘たちがまた広げて、整備している感じかな。

 いやあ、凄い、凄い。若者たちの素敵な姿に触発されて、おかげで、きりしま月の舟2周年イベントをばっちり頑張ろう、という気になりました。

 4年前のわたしの盛大な還暦祝いイベントのときに、母は「あんた、しゃべりすぎ、でしゃばりすぎ」とジャッジして、わたしを大いに怒らせましたが、わたしもまた、昨日は又吉君に「おじさん顔になってきたよ」とジャッジしちゃったなあ(笑)。ま、しょうがない、愛しすぎてるんだから(笑)。

 これからは、息子、娘たちと対等におつきあいしていきます。博多俊輔君、ギターのトム君とも出会えて、「なかにし礼うた散歩」のことを話せたし、月の舟の会員さんたちともいっぱい会えて、本当に嬉しかった。皆さん、大好きだよ。

 ああ、こうしてわたしはたくさんの人を愛し、そして愛されているんだな。この愛の循環って、なんて心地よいのでしょう。

 先日も、立て続けに、昔の仲間たちが「きりしま月の舟」に立ち寄ってくださり、ランチしてくださって、2周年イベントにもお申込みくださいました。

 その仲間たちは、わたしがこうして仕事を続ける、その入り口を創ってくださった方々。いろんな勉強会でご一緒した方々でした。きりしま月の舟を大絶賛してくださって、本当に嬉しかったなあ。

 そうそう、そういえば、先日亡くなった西郷輝彦さんに、わたしはお会いしています。小学2年生のとき、西郷輝彦さんが、わたしのふるさとである串木野市に歌謡ショーでおいでになって、そのときに、妹とともに舞台で花束をお渡ししたのでした。

 たぶん商工会か何かからの花束をわたしたち姉妹が渡すお役目を仰せつかったのでしょう。母がわたしたち姉妹にレースの靴下を穿かせ、お揃いの洋服を着せて、それはそれは可愛かっただろうな。

 わたしたち姉妹が可愛いのは当然なのですが(笑)、そのときの母の嬉しそうな顔をいま思い出します。嬉しくって、娘たちが愛おしくってしょうがない、という笑顔。

 わたしも妹もみんな、母に愛されていた。行き過ぎの毒舌はあったかもしれないけれど、愛されていたことは確か。そして、わたしたちも母を大切にしてきたし、いまも大切にしている。

 そういうことなんだなあ。やっと悟りました。感謝するとは、こういうことか。

 静かに日々の豊かさを受け取り、さらに今後30年の課題に取り組んでいきます。

 ぜひ、きりしま月の舟2周年イベントにお越しくださいませ。3月19日から21日までの三日間。フリーマーケット開催。

 19日午後2時から芥川マラソン(読書会)「河童」を読みます。ユタカ君のリードで、和気藹々と読書の楽しみを味わいます。どなたでもどうぞ。読んでからの参加がずっと楽しいですが、まずは聴いてみる、も大歓迎。参加費、千円。

 20日午後2時から「月の舟コンサート」春の歌特集です。歌、冨松大幹さん、ピアノ伴奏、春田友里恵さんのコンビは素晴らしい音楽を届けてくださるでしょう。みたけきみことピアノの師匠ちあき先生とのピアノ連弾「運命」で、コンサートの幕開けです。

 21日午後2時から「女神、大集合」。前半は、「天才、大集合」で、ご自分の天才を皆様に披露していただきます。後半は、特別ゲスト、伊東怜子さんのシャーマニックドラムヒーリング体験ができますよ。

 わたし自身がわくわくします。ぜひ、皆さまもお越しくださいませ。春の陽射しのなかで、ゆったりと楽しんでくださいね。

 さあ、今日も素敵な一日でした。おかげさまで、こうしてカフェをやることで、素敵なお客様に出会えて、まあ、なんというか、幸せの出入り口として、きりしま月の舟があることに、心から感謝します。

 この地球のおかげさま、この日本のおかげさま、わたしとおつきあいくださる皆様のおかげさまです。この愛を皆様にまた循環させていきますね。

 最後に一言、最近気に入った言葉。「憧れの人は、自分です」。

 きゃー、かっこいいね。今日も自分をたっぷりと愛せました。それが平和への第一歩。